株式会社ACW−DEEP
VRを使えば、通常は行けない場所に自由自在に行けるようになります。
その特性を利用して、建設作業中の高層ビルに登る高所作業訓練や、溶鉱炉の近くまで行く危険作業訓練に使用されています。さらに公共輸送に使われる航空機やバス、船などの運転シミュレータ、大型クレーンや巨大な機械装置の操作シミュレータ、手術シミュレータなど、難しい操作や手さばきを要する作業の訓練にも活用可能。建設、土木、製造、運輸業など、熟練人材が急減する業界での技術承継にも大いに役立てられます。
VR活用のネックになるのが「VR酔い」です。大きな要因はVR映像と実際の体の動きがリンクしないことによる映像ズレ。ヘッドセットで視界全体をVR映像で覆ってしまうため、自分の手足や周囲の環境を視認できず、体の動きを見失い、まるで映像内で揺り動かされているように感じるのです。ヘッドセットの重さや密着感といった装着する時の不快感も、気持ち悪さに繋がります。特にアジア人は「VR酔い」の症状を引き起こしやすいと言われています。
このような不快感は、人材トレーニング市場への普及の大きな障壁となっています。いくら便利でも、酔いを経験した人は積極的に使用したいとは思えません。VRには底知れない可能性があるにも関わらず、現状はその構造のせいで威力を発揮する前に排斥されてしまっているのです。
弊社が開発した「Advanced VR(AVR)」は、VR用ヘッドセットの視線方向に高性能3Dステレオカメラを装着したもの。3Dステレオカメラで撮影される映像とPCが生成するVR映像をリアルタイムで合成し、表示させます。カメラで撮影する映像には自身の手足はもちろん、近辺にあるテーブルや椅子なども含まれるため、「AVR」体験者はVR空間内で自分自身の体の動きを視覚的に認知可能。VR映像によって揺り動かされるような映像ズレが生じません。「AVR」はVR酔いを解決し、ストレスフリーなVR体験を実現します。
「AVR」は現実映像と仮想映像をリアルタイムで合成します。クロマキーによる色情報を使った技術と、ステレオカメラによって生じる両眼視差から算出される距離情報を使った技術を同時に使用。クリアな合成を実現し、仮想映像内の物体と現実映像をスムーズに融合します。
通常は情報量が多いためにコンピュータ内の合成処理に時間がかかり、表示映像に遅れが生じます。そうすると目の前で動かしている手も遅れて表示されてしまい、映像ズレが発生。VR酔いを引き起こしてしまいます。これに対し弊社は特殊な方法によって映像ズレを感じないほどに処理時間を短縮しています。この技術は特許(特許第6717486号)も取得しており、他社には真似できないものです。
出典:テレビ神奈川 tvk3ch「LOVEかわさき」 6月19日放送 VRから始まる新しい世界
人間の視野範囲に合わせて、独自の映像合成位置を設定
また「AVR」は外付けの3Dステレオカメラの設置位置をやや下向きにしています。VRヘッドセットの表示範囲は視野角120度ですが、3Dステレオカメラの撮影領域は90度しかありません。これはステレオカメラのレンズを高画質な映像収録用に設定しているため。視野を粗くしないよう、高画質映像を維持することが重要です。
これはすなわち、映像の合成領域を指定する必要があることを意味します。しかし、人間の視野範囲は歩く際に足元の危険をいち早く認知するため、下方向に広くなっています。その特徴を利用して「AVR」ではカメラをやや下向きに設置し、合成視野範囲を設定しています。様々な実験を経て導き出した独自の合成位置設定は、現在特許申請中です。
「AVR」は現在、企業の安全教育で最も活用されています。そのうちの2例をご紹介いたします。
一つは、西武建設株式会社様が高所作業の安全教育として導入した事例。高所作業を行う場合はハーネスの装着が法律で定められていますが、装着方法の訓練はできません。教育のために作業員を高所に行かせ、危険を冒させるわけにはいかないからです。しかしそこで問題になってくるのが、ハーネスを装着して落下した場合です。足などがハーネスに締め付けられ、動脈や静脈の血流を止めてしまった際の対処法を、訓練なしに身につけるのはとても困難です。
救助が駆けつけるまでの時間が仮に20分程度かかった場合、命に関わります。通常、付属のロープに足を引っ掛けて圧迫を解除させることで血流を取り戻せるのですが、その訓練ができる環境がありません。従来のVR教育では落下した恐怖は味わえるものの、このような行動訓練は不可能でした。VR映像と実際の手元を同時に見られる弊社の「AVR」を使えば、この行動訓練が実現できます。
実際、作業員の方からは「本当に落ちたような感覚があって、良い訓練になった」とのお声を頂いています「仮想であれ、実地訓練はいざという時の行動につながるので非常に効果が高い」と評判で、引き続き採用していただいています。
もう一つは、大手鉄道・バス会社様のドライビングシミュレーターへの活用事例(現状は開発段階)です。一般的に使用されているドライビングシミュレーターは、実際の運転装置に大型のスクリーンを組み合わせて視界を再現しています。表示する映像は運転操作に従って変化する3DCGによる仮想映像です。しかしスクリーンやモニターを使用するため、視野範囲に制限が生じ、位置合わせのメンテナンスも必要。経年劣化による交換などの運用コストもかかります。スクリーンやモニターではなくVRに変更すれば、360度全方位の映像表示が可能になり、位置合わせも容易に。しかし一般的なVRシステムの場合、手元の運転装置と組み合わせて使用できず、運転装置部分も含め全てを3DCGで構築する必要があります。
弊社の「AVR」であれば、手元の運転装置に組み合わせて使用できるため現実の運転感覚を保てます。360度全方位の映像表示が可能で、トレーニング効果も高められます。また、運転装置はそのままにVRヘッドセット内に表示する映像のみを入れ替えれば良いため、既存のシステムからの変更コストも安くすみます。
本システムは大手鉄道・バス会社様との共同開発を進めており、「シミュレーションとして非常に再現性が高く、訓練効果も上がる」と高い評価をいただいています。
その他、土木・製造といった業界の大手企業様からもお問い合わせを頂いており、導入に向けて話を進めております。
医療・介護分野での活用に向けても、開発を進めている
今後は医療現場でのトレーニングでもご活用頂くべく、外科手術を想定した開発も進行中。実際の人体を用いた訓練ができない医療の分野では、VRを用いた仮想訓練に大きな期待が寄せられています。そのため業界ではすでにいくつかのVR訓練システムがあります。しかし多くはコントローラーによる操作のため、実際の医療行為からかけ離れてしまっており、訓練効果が疑問視されています。
弊社の「AVR」を活用すれば、メスなどの道具を持った自身の手がそのまま使え、実際の医療行為に近い動きで訓練できます。切除する患部は、3DCGで立体的に表現することも可能。現場が期待しているVR訓練を実現できるようになります。他にも介護の分野から、リハビリへの活用についての問い合わせも頂いています。体の不自由な方の動作訓練を、コントローラーではなく自身の体を使って楽しくできるシステムへの期待が寄せられています。
しかしながら、VRにはヘッドセットの重さという課題があります。長時間装着していると重量が不快感に繋がり、VR酔いの原因になってしまいます。
一般的なVRヘッドセットは個人向けエンターテイメント利用が主な目的となっているため、デザインも含めて余計なパーツが多くついています。法人向けを想定して不要なパーツを取り除いて試作したところ、大幅に軽量化できることがわかりました。一般的なヘッドセットが約800gなのに対し、軽量化したものは約300g。表示パネルとレンズ、小型カメラといった「AVR」システムに必要なパーツはしっかりつけたまま、軽いヘッドセットを実現できます。
また、試作の中で顔面への密着をなくしたことで、ヘッドセット独特の圧迫感も解消できました。隙間から現実世界が垣間見れて映像ズレをさらに抑えられます。
さらに新型コロナウィルスが世界的に蔓延した現代では、顔面に密着する既存のヘッドセットでは感染リスクが高いと言えます。弊社の開発した非接触型ヘッドセットなら、しっかりと衛生面を考慮しながら複数人で共用できます。
弊社は企業から開発を受託し、オリジナルのシステムを提供して参りました。受注型は、顧客からの要望にピンポイントに対応したシステムを提供できるメリットがあります。しかしながら多くの注文は受けられないために売上に限界があり、販売ネットワーク構築も非常に難しいという課題がありました。
そこで弊社は、「AVR」の基幹ソフトウェアを特許化し、その権利を販売するビジネスモデルへ転換します。コンテンツ開発力や営業力のある企業と開発パートナー契約を結び、共同で製品を開発。システムの販売権をパートナー企業へ持たせ、弊社は基幹ソフトウェアのライセンスを販売し売上を得ます。パートナー企業の営業ネットワークに「AVR」を載せ、拡販する考えです。現在、大手建設会社様を始め、いくつかの企業様とパートナー契約に向けて具体的に話を進めております。
海外でも同様のビジネスモデルを展開。これまで営業ネットワークのなかった地域にも、素早く拡販できるようにします。
「非接触型ヘッドセット」も開発パートナー制で生産
「非接触型ヘッドセット」販売拡大の際にも開発パートナー制度を導入します。基本設計、テスト版の製作までは自社で開発を進め、そこで生まれた核技術を特許化する計画です。量産が可能な製造体制を持つ企業と契約を結び、製品を共同で開発。システムの販売権をパートナー企業に持たせ、弊社は基本設計使用権から売上を得ます。弊社は在庫管理をする必要がなくなり、販売にかかるリスクを回避しながら世界中で販売できます。
テクノロジー専門調査会社IDCの最新レポート(2020年11月17日)によると、VRのグローバル市場は、2020年から24年までに年率54%で成長し、市場規模は120億ドル(約1兆2,440億円)から728億ドル(約7兆5,465億円)に拡大すると予測されています。
法人向けでは、主要3分野として、人材トレーニングが41億ドル(約4,244億円)、産業メンテナンスが41億ドル(約4,244億円)、小売販売が27億ドル(約2,795億円)と予測されています。
昨今の新型コロナウィルス禍によって、VR活用による生産性の改善・コスト削減効果にさらに注目が集まっており、導入が加速しています。
民間企業、行政からも期待されている「AVR」を普及させ、市場を活性化する
この2024年の予測数値は、VRが注目され始めた4年前からほとんど変わっていません。これは、世界的に大きな市場が見込まれているにも関わらず、未だその市場が眠っていることを意味しています。その原因が、映像ズレに起因する「VR酔い」などの身体的問題です。いくら効果が高くても、そこに身体的問題があっては使用し続けられません。つまり、その問題を解決できれば、市場が目を覚ますと考えられます。
まさに私たちの開発した「AVR」はその問題を解決するシステムであり、市場が待っている製品と言えます。
実際に展示会などでは、過去にVRを導入したものの運用ができず、VRに対して否定的な考えをお持ちの企業様のお声を多く耳にしました。しかし弊社の「AVR」を体感してもらったところ、その可能性を大いに感じ取っていただけました。結果、建設・土木・製造・運輸といった各業界の大手企業様から多くのお問い合わせがあり、「AVR」の導入事例も年々増えている状況です。
こうした実績から「川崎市ものづくりブランド」にも認定していただき、川崎市から支援体制も得ております。民間だけでなく行政からも高い評価と期待を得ていることからも、市場からの期待を感じることができます。
今後はより使いやすい「非接触型AVRヘッドセット」にしていくことで、製品はより磐石なものとなり、大きな市場を手にできると考えています。
弊社は「AVR」の開発を2014年からスタートし、様々な試作を経て成長。2018年から開発受託販売をしています。現在では建設、土木、製造、運輸といった様々な企業で、主に人材トレーニングのためにご活用いただいております。顧客様からの様々なお声を開発に反映してきましたが、今までどうしても手が出せなかったのがヘッドセットの開発です。
「もっと軽くしてくれないか」「もっと簡易的に使いたい」などのご要望を多数頂いていましたが、これまでは市販の機器の組み合わせをソフトウェアで制御するシステムであったため、形状の改善ができませんでした。
しかし昨年、「非接触型AVRヘッドセット」を試作したところ、様々な課題がクリアになると同時に、大きな可能性を見出すに至りました。実現するのは決して不可能ではなく、自分たちの手の届くところにあったのです。新しい製品で多くの方々のご要望に応え、より快適な「AVR」システムの提供ができると確信しております。
今回調達させて頂く資金により、2021年末に向けてプロトタイプを開発します。2022年には開発パートナー企業で試用していただき、その結果をもとにテスト機の開発へ移行。
「非接触型AVRヘッドセット」テスト機を販売して売上を確保する一方、香港での展示会へ出展。既に台湾やマレーシアの展示会では良い感触を掴んでいるため、今後もアジアから海外市場を見据えて積極的に展開していきます。非接触型のヘッドセットは世界中どこを見渡してもまだどこも取り組んでいないため、早急に展開を図り、市場を抑えていきたいと考えています。
2023年は、開発した非接触型テスト機を米国CES※で公開。海外営業にも対応できる人材を採用し、販売ルートを確立、量産機開発を開始する計画です。2024年には、量産機の生産拠点を国内外に構築、システム販売だけでなくコンテンツ開発会社へ開発キットを提供し、顧客の拡大を図ります。2025年は、ここまで築いたビジネスモデルをより強固なものとし、独自のシステム販売と開発用システム販売を国内外に拡大します。
※コンシューマー・エレクトロニクス・ショーの略称。全米民生技術協会(CTA) が主催する、ネバダ州ラスベガスで開催される世界最大のテクノロジー見本市。
数値計画の詳細につきましては、こちらの書面をご覧ください。
新株発行概要書代表取締役社長
山口 聡
90年代に株式会社日立電子(現日立国際電子)にて業務用フライトシミュレータを開発。97年に(株)IMAGICAへ入社し、CGを使用した撮影シミュレーションを開発。2005年に従来のシステムをプリビズシステムに改良し、映画やCMのプリビズ作業を担当。日本アカデミー賞会員、米国PrevisSocietyProfessional会員、米国VisualEffectSociety会員として日本の映像製作のプリビズ啓蒙活動を行う。2011年に退社し、1年間のフリーランス期間を経て、(株)ACW-DEEPを設立。
AVRプログラマー
角田 寧
学生時代に3DCG技術を学ぶ傍ら、ゲームプログラムに興味を持ち独学で様々なプログラム言語を習得。入社後、UnityやOpenCVなどの新技術を習得し、AVRソフトウェアの開発に貢献。AVR基幹ソフトウェアの特許化技術を開発。
制作管理
伊藤 雄之介
学生時代に習得した3DCG技術を活かし、取引先企業との窓口となり、データ管理等を担当。現在は、AVRを活用した撮影ステージであるマジ空ステージ(Magic Stage:東京都豊島区西巣鴨)の運営を一任。
講演
・2014年 国立台南芸術大学にて講演
・2019年 タイで開催されたBangkok International Digital Contents Festival 2019にて講演
実績
・2021年 第17回川崎ものづくりブランド認定
・2021年 発明大賞 考案功労賞受賞
記事掲載
・2021年 次世代機を年内に試作すると発表(日刊工業新聞)
推薦
ACW-DEEP社は設立時より弊財団が管理するインキュベーション施設である、かわさき新産業創造センター(KBIC)に入居され、「AVR(拡張仮想空間提供)」システムについての研究開発を重ねてきました。山口社長は映像制作会社での経験を活かし、より快適なVR空間の実現を目指しています。今後はその技術を活用し、教育・訓練といった人材育成に関する分野への更なる進出を検討しています。本事業においても益々の発展とご活躍を期待しております。
公益財団法人 川崎市産業振興財団
理事長 三浦 淳
10株 100,000円単位
払込金額の総額(上限募集額を発行の場合)61,500千円のうち、発行諸費用として約11,365千円を差し引いた後の手取概算額50,135千円については、システム開発用の備品に3,000千円、非接触型ヘッドセットのプロトタイプ1号機の開発費に7,000千円、2号機から4号機までの開発費に32,000千円(1号機が稼働次第、順次製作予定)、展示会出展等の広告宣伝費に7,000千円、残額は営業要員の人件費に充当します。
払込金額の総額が、13,200千円(目標募集額を発行の場合)以上61,400千円以下であった場合、発行諸費用を除く手取概算額(約10,013千円〜50,135千円)については、このうち10,000千円までの部分については、システム開発用の備品に3,000千円、非接触型ヘッドセットのプロトタイプ1号機の開発費に7,000千円に充当します。充当後、残額がある場合は、順次以下の①〜③の費用に充当します。
①残額のうち32,000千円までの部分:2号機から4号機までの開発費(1号機が稼働次第、順次製作予定)
②①に充当後の残額のうち7,000千円までの部分:展示会出展等の広告宣伝費に充当
③①及び②に充当後の残額:営業要員の人件費に充当
自社による株主名簿管理となります。
以下において、発行会社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性がある事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、重要であると考えられる事項につきましては、積極的な情報開示の観点から以下に示しております。発行会社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、リスクの軽減策を講じるとともに、発生した場合の対応に努める方針としていますが、本項の記載事項をご精読いただき、十分にご理解いただきたくお願い申し上げます。
以下において、発行会社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性がある事項を記載しております。
以下において、発行会社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性がある事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、重要であると考えられる事項につきましては、積極的な情報開示の観点から以下に示しております。発行会社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、リスクの軽減策を講じるとともに、発生した場合の対応に努める方針としていますが、本項の記載事項をご精読いただき、十分にご理解いただきたくお願い申し上げます。
以下において、発行会社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性がある事項を記載しております。